豊田佐吉が考えた「自働化」、豊田喜一郎の唱えた「ジャスト・イン・タイム」を二本柱に、ヘンリー・フォードの「流れ作業方式」に学び、これを発展させるなかで、トヨタ生産方式は生まれた。その発明者こそ大野耐一である。彼の著書『トヨタ生産方式』の副題に「脱規模の経営をめざして」とあるように、単なる大量生産ではなく、必要なものを、必要な時に、必要な分だけ製造し提供することがトヨタ生産方式の本質であり、また大野が生涯追及したものだった。いまやトヨタ生産方式は、自動車業界のみならず、他の製造業、さらにはサービス業でも導入されているが、トヨタほどのパフォーマンスを実現している企業はない。また、先進国企業は高付加価値業務に特化し、調達や組み立てなどの低付加価値業務をアウトソーシングしてきたが、これがあだとなり、「ものづくり能力」の足腰が弱り、ひいてはイノベーション能力にも陰りが表れている。本特集では、大野耐一を再発見することにより、日本製造業のあり方について再考する。
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